「相変わらず寒いわねぇ・・・・・・」

テレポで戻ってくれば一面の雪景色。 エンピレアム南東、小さな噴水のそばにある一軒家に降り立ったアラディアは、寒暖差にふるりと身震いをする。ようやくトラルとアレクサンドリアの一件がひと段落し、拠点が石の家に戻ったことで、久しぶりに家に戻ることにしたのだ。

庭にあるポストを覗き、モーグリレターが届いていないことを確認すると、扉に手をかける。 が、なんだか中が騒がしい。 そういえば、数日前にリテイナー二人に帰宅する旨を連絡すると、ルナが「おいしいものでも作って待ってるからね。気をつけて帰ってくるんだよ」とまるで親のような台詞を口にしていたが・・・・・・ まれに予想外の行動を起こすルナのことだ。ファウストがきっと黙っていないだろうし、喧嘩したりしていないだろうか・・・・・・?とだんだん不安になってくる。

一瞬ためらったが、意を決してドアを開ける。一階は特に変わりもないカフェスペースだ。 であれば、下の階からか?と思い、慎重に階段を下りる。 だんだんと鮮明になる騒ぎ声はどうやらキッチンからするらしい。 件の現場にたどり着けば、そこには———

「——いい加減にしろ!なんでお前はこうも落ち着きがないんだ!?」

「いやほんと、ふふ、悪いと思ってるんだって!ふふふ」

・・・・・・顔をクリームだらけにしたファウストと、腹を抱えて笑っているルナがいた。

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「それで、クリームを作るときに誤ってぶちまけちゃったってっことね・・・・・・」

「ハイ・・・・・・」

腕組をした小柄なララフェルの前に、大の大人がふたり、正座をしている。 その頭には痛そうなたんこぶが付いていることから、落ち着かせるためにもうひと悶着あったのは言うまでもないだろう。作った料理たちは無事だったが、作った本人たちは無事では済まなかったようだ。

「まず自分がやったことは最初に心から謝ること!」 「ハイ・・・」 「それからルナも悪気があったわけじゃないんだし、怒鳴りつけないこと!」 「・・・・・・」

ふい、と目をそらすファウストに対して、アラディアはゴン、と床に杖をつき、重たい音が響く。 「わかった?」 「・・・・・・ワカッタ」

アラディアは怒らせると怖い。本当に怖い。話を聞かないと分かれば問答無用でコラプスが飛んでくるし、なんだか尋問されている気分だ。ララフェルだからと甘く見てはいけない。 もう何度目かもわからない仲裁に、二人とも顔をくしゃくしゃにしてしょげていれば、アラディアはこの話は終わりとばかりに杖を戻してポン、と手をたたいた。

「さて、せっかく作ってくれた食事が冷めてしまうわ。クリームは後で作り直しましょ」

先ほどとは打って変わってふにゃりと眉を下げて笑えば、ようやく三人で食事の支度を再開するのだった。